にこりと浮かべる王子様スマイルとは裏腹に若干毒づいた言葉を放ち、栄先生は「それじゃ、また」と告げて颯爽と去っていく。

 呆然と見送っていると、末永さんがじわじわと怒りを露わにする。


「ちょっと、なんなのアレ……アレのどこが王子様なのよ! ていうか、なんで私が婚活パーティーに行ってること知ってんの!?」
「う、うーん。イメージ変わりましたね」


 彼女は私の腕を揺すって憤り、私も苦笑いする。確かに、正真正銘の王子様ならあの発言はしないだろう。笑顔はキラキラしていたけれど。

 とはいえ、私たちも栄先生の人間性について深く知っているわけではなく、上辺だけで王子様だと決めつけていたので、意地悪な部分があっても決しておかしくない。

 しかし、末永さんはそのイメージを裏切られ、さらには毒を吐かれたことに怒りが収まらないらしい。


「あ~も~朝から腹立たしいっ。伊吹ちゃん、仕事終わったら飲みに行こ! そこでデートの件も相談しよ!」
「は、はい」


 末永さんの勢いに押され、つい頷いてしまった。今夜はアドバイスをもらう代わりに、彼女の介抱をすることになりそうだ。