彼女は循環器系の病気で、桃真くんは足の怪我で入院している。病室も違うので、思うように会えないのが歯がゆいのだろう。

 切なそうな顔を見ていると、胸がキュンとする。梨乃ちゃんは桃真くんに恋をしているんじゃないかな、と以前から感づいていたから。

 甘酸っぱい小さな恋を応援したくて、私はひとつの提案をしてみる。


「じゃあ、お手紙書いたらどう? 会えなくてもお話できるよ」
「手紙か……なんか恥ずかしい」
「まあ、そう言わずに」


 含み笑いをして、カウンターの後ろの棚からクラフトボックスを取り出す。カウンターの上でそのふたを開ければ、たくさんのレターセットが現れた。

 花柄やスイーツ柄、水玉模様など、乙女心をくすぐるデザインのそれを見て、梨乃ちゃんのガラス玉みたいな瞳が輝きだす。


「わあ~可愛い!」
「でしょ? どれでも好きなもの使っていいからね」


 ついさっきまであまり乗り気ではなさそうだったのに、すっかりうきうきした様子でボックスの中を漁っている。手紙を書く前の、相手を想って便箋を選ぶこの瞬間は、とても心が弾むもの。