前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 明日はきちんと病院に行こう。久夜さんのおかげで気力が湧いてきたから、もう塞ぎ込んだりしない。どんな方法でも試して、声を取り戻さないと。

 気持ちがだいぶラクになってマンションに帰宅すると、脱いだ服がソファにかけられていたり、コップが出しっぱなしになっていたりする。彼の無頓着さを改めて実感して、つい笑ってしまった。

 久夜さんは荷物を置いて私をソファへ促し、なにやらキャビネットの引き出しを開けている。

「ようやくこれを渡せるよ」というひとり言を聞き、そういえば〝渡しそびれたもの〟があるらしいことを思い出した。

 なんだろうと首を傾げて待っていると、隣に彼が腰かける。そして、向き合った私の左手を取った。


「君への想いはありったけ伝えたつもりだけど、まだ肝心なことをちゃんと言っていなかった」


 そんな言葉と共に、光るものを摘まむ彼の指が私の薬指に近づけられる。私は目を見開き、息を呑んだ。

 小ぶりなダイヤが輝く優美なS字ラインのリングが、薬指を滑る。

 こんな素敵な指輪、いつの間に……!?