心が押し潰されそうになりながらも、とりあえずモニターで来客を確認する。そこに立っていたのはさっき電話をかけてきた大地で、私は目を丸くした。

 びっくりした……どうしてここに? 私が引っ越してから大地が来るのは初めてだ。なんの用か気になるし、ここまで来ているのに居留守を使うのも申し訳ない。

 それに、直接会えば現状を伝えられる。いつまでも電話を無視していたら絶対に心配されるので、大地には打ち明けようと決心した。

〝入ってきていいよ〟とメッセージを送り、彼が来るのを待つ。思いっきり部屋着のままだけれど、弟なら構わない。

 いろいろと無気力になってしまった私は、やってきた彼をぎこちない笑みを貼りつけて迎えた。

「おい、いるならなんで電話に出ないんだよ」と不満げにぼやく彼は、部屋の中には上がらずにお土産らしき紙袋を渡してくる。 


「とりあえずこれ、母さんが友達と行ってきた温泉旅行の土産。こっちに来る用事があったから『じゃあついでに伊吹に届けて』ってパシリに……」


 そこまで言って紙袋から私に目線を移した大地は、急に真顔になって言葉を飲み込んだ。