救急車に同乗して白藍に戻る頃には、櫂の意識も回復していた。
これから様々な検査を行うが、俺が予想しているのは閉塞性肥大型心筋症。心筋がどんどん分厚くなり、心臓の機能に障害をきたす病気だ。
無症状で過ごす人もいれば、突然死の危険性もある。櫂もその心配がないかを判断するため、ホルタ―心電図を装着して二十四時間検査をしなければならない。
それらの準備をする間、診察台に横たわってぼんやり天井を見つめている彼の様子を窺う。
「櫂、具合はどうだ?」
「……普通」
素っ気ない返事はいつも通りで、今はそれが安心した。四肢に電極をつけていると、櫂は気力のない声でぽつりとこぼす。
「見捨てればよかったのに。助ける価値もない、こんな男……」
「俺は医者だぞ。見捨てるなんてできるわけないだろ。そもそも俺が今こうしているのは、櫂のためと言っても過言じゃないんだから」
意外そうな目をこちらに向ける彼に、俺は準備を続けながら外科医を目指した理由を初めて打ち明ける。



