前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 ──思いもよらない告白に、頭を殴られたような衝撃が走った。

 ふたりは中学の先輩後輩で、櫂が伊吹のトラウマの相手……? 信じられない事実に思考がついていかない。


「そんな……どうして」


 動揺を露わにして呟く俺に、櫂は覇気のない顔で淡々と語る。


「あいつを見てるとイラついたんだよ。いつも怯えてるし、しゃべるときもたどたどしくて。俺の言うことにはなんでも従うから、押し倒したらどうなるかって──」
「ふざけるな……!」


 途中で堪え切れなくなり、俺は腰を上げて彼の胸倉を掴んだ。顔は歪んで醜くなっているだろうが、声は激情をなんとか抑える。


「伊吹はお前にされたことがずっと心の傷になって残っていた。もしも、今また苦しめているなら……俺はお前を許せない」


 ここまで憤るのはいつぶりだろうか。いや、誰かに攻撃的な怒りをぶつけるのは初めてかもしれない。

 掴んだ拳を小刻みに震わせる俺とは対照的に、櫂は暗く淀んだ面持ちで静かに言う。


「あいつはあんたのために、無理やり俺と向き合おうとしてたよ」


 そのひとことで、冷水を浴びせられたかのごとくはっとした。