前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~


 それからも大きな問題は起こらず、昼前に病院を出られた俺は、その足で櫂が住むマンションへと向かった。幸い日曜なので、部屋にいる可能性は高い。

 その予想通り、インターホンを押すとラフな格好の櫂が出てきた。俺を見て相変わらず不機嫌そうにしている。


「……なに」
「話がある。伊吹とのことで」


 単刀直入に言うとやはり閉じこもろうとするので、俺はドアを押さえて「今回は引く気はない」と食い下がる。

 俺の様子でただごとではないと感じ取ったのか、一瞬目を丸くした彼は渋々ドアから手を離して俺を上げてくれた。

 久々にお邪魔した1DKの部屋は、そこまで散らかってもいなくてわりと綺麗に保たれている。インテリアなどはシンプルなものが多く、無骨な男の部屋という印象だ。

 櫂はキッチンでコーヒーを淹れ始める。その背中に〝めんどくさい〟と書いてあるような気だるさを醸し出しているが、一応ふたり分用意しているところからして律儀な一面もあるのだ。