プライベートにどれだけ頭を悩ませても、医者としての自分はなにがあっても保たなければならない。そこだけは肝に命じているので、白衣や手術着に身を包んで戦場に出た瞬間にスイッチを切り替えることはできる。
まず電子カルテでバイタルの確認をしてから、担当患者の様子を見て回る。昨日手術を行った患者にも状態が変化している人はおらず、皆安定していたので心穏やかにナースステーションへ戻った。
ところが、こちらに背を向けて棚からカルテを取り出している看護師ふたりから、思わぬ発言が飛び出す。
「ええっ、明神先生の奥様が浮気!?」
「ちょっと、声が大きい……!」
立てた人差し指を唇に当てる看護師が辺りを見回し、俺と目が合った瞬間、毛を逆立てた猫のようにギョッとした。無表情で見据える俺に、彼女たちは身を縮めて頭を下げる。
「すっ、すみません! なんでもありませ──」
「どうぞ、そのまま話して」
自分から不穏なオーラが漂っているであろうと自覚しつつ、ふたりに歩み寄る。怯えた様子の彼女たちは一度目を見合わせ、遠慮がちに話し始めた。
「十日くらい前に、先生の奥様が男の人に肩を抱かれているのを見た人がいるんだそうです。二十代くらいの男性で、奥様は先生の弟さんだと言い訳していたとか……」
まず電子カルテでバイタルの確認をしてから、担当患者の様子を見て回る。昨日手術を行った患者にも状態が変化している人はおらず、皆安定していたので心穏やかにナースステーションへ戻った。
ところが、こちらに背を向けて棚からカルテを取り出している看護師ふたりから、思わぬ発言が飛び出す。
「ええっ、明神先生の奥様が浮気!?」
「ちょっと、声が大きい……!」
立てた人差し指を唇に当てる看護師が辺りを見回し、俺と目が合った瞬間、毛を逆立てた猫のようにギョッとした。無表情で見据える俺に、彼女たちは身を縮めて頭を下げる。
「すっ、すみません! なんでもありませ──」
「どうぞ、そのまま話して」
自分から不穏なオーラが漂っているであろうと自覚しつつ、ふたりに歩み寄る。怯えた様子の彼女たちは一度目を見合わせ、遠慮がちに話し始めた。
「十日くらい前に、先生の奥様が男の人に肩を抱かれているのを見た人がいるんだそうです。二十代くらいの男性で、奥様は先生の弟さんだと言い訳していたとか……」



