「結婚式には間に合わせないと、ですね」
「また一緒に選びに行こう」


 幸せな約束をすると、彼女は嬉しそうに紅潮した頬を緩めて頷いた。幾度となく胸がくすぐられ、愛情を目一杯込めて抱く。

 俺の妻はどうしようもなく可愛い。他の誰のものにもならなかったのが奇跡だと思うほど。


 伊吹と夫婦になって以来、俺はすっかり心配性になったらしい。

 彼女は式までに結婚指輪を準備すればいいと考えているようだが、これからオーダーすると仕上がりまで時間がかかるので、できるまでの間がなんとなく心許ない。男除けのために、一応つけさせておいたほうがいいのではないか。

 そう懸念した俺は、後日遅くまでやっているジュエリーショップを探して、仕事終わりに立ち寄った。

 女性に指輪をあげるのは初めてだが、店頭にあるものの中から伊吹に似合いそうな上品なデザインのものを直感で選ぶ。

 結果、手に入れたのは小ぶりなダイヤが埋め込まれた、優美なS字ラインのリング。

 なんの記念日でもないのにプレゼントしたら驚くだろうな。でも、愛している気持ちを表すのはいつだっていいはず。