そうしてずっと大切に想っていた人をやっと手に入れた今、愛しさは留まるところを知らない。

 最初は戸籍上夫婦になれただけでも十分だと思っていたのに、結局心も身体もすべて俺のものにしたくて堪らなくなり、同居し始めたときはかなり悶々とした。

 伊吹はまったく気づかなかったくらい俺は顔に出ないらしいが、一度触れたらもっと欲しくなるばかりで、本当は毎夜抱きたい衝動に駆られている。

 とはいえなかなかそれは難しいので、タイミングが合った日は丁寧にたっぷりと愛するのだ。今夜みたいに。

 ベランダで花火を見終わったあと窓辺で……なんて早まりはせずに、きちんとベッドの上で白く綺麗な身体を愛撫する。

 時折色っぽい声を漏らしては荒い呼吸をする彼女に耽溺しつつ、あらゆる部分を味わい指と指を絡めた。

 そのとき、ふと足りないものに気づいて、組み敷いた彼女の左手を眺める。


「そういえば、指輪買わないとな」


 入籍に同居にと慌ただしく過ぎてしまって、肝心なものを用意できていない。女性からしたら不満に思われそうだが、伊吹も今気づいたように「あ」と声を漏らした。