ドアを開けたのは、大学二年生の弟の大地だ。先日美容院に行って、柔らかなブラウンのナチュラルショートにしてきた髪は、中性的な顔によく似合っている。
「姉ちゃん、ご飯」
「わ、もうそんな時間?」
時計を見やれば七時を過ぎていた。実家暮らしの私は、夕飯の準備を手伝うのが毎日のお決まりなのに、今日はすっかり頭から抜けていた。
すぐに部屋を出て、大地と一緒に一階へ下りる。その最中、ため息交じりのひとり言をぽつりとこぼす。
「結婚するにはどうしたらいいかな……」
大地はギョッとした様子で、勢いよくこちらを振り向いた。私とよく似た形の瞳は、得体の知れないものを見ているかのよう。
「なに、突然。そういう相手がいんの?」
「ううん。ただ、家族からしたら結婚してもらいたいよね、ってふと思って」
私の花嫁姿を見たいのは、きっと祖母だけじゃなく両親も同じだろう。あれこれ考えているうちにそう気づいたのだが、大地は違うらしい。
「別にいいんじゃない、しなくても。姉ちゃんが一生独り身でも、俺が面倒見てやるよ」
「……やっぱり結婚しよう」
それは大地の将来のお嫁さんに嫌がられそうで、苦笑いして呟いた。
「姉ちゃん、ご飯」
「わ、もうそんな時間?」
時計を見やれば七時を過ぎていた。実家暮らしの私は、夕飯の準備を手伝うのが毎日のお決まりなのに、今日はすっかり頭から抜けていた。
すぐに部屋を出て、大地と一緒に一階へ下りる。その最中、ため息交じりのひとり言をぽつりとこぼす。
「結婚するにはどうしたらいいかな……」
大地はギョッとした様子で、勢いよくこちらを振り向いた。私とよく似た形の瞳は、得体の知れないものを見ているかのよう。
「なに、突然。そういう相手がいんの?」
「ううん。ただ、家族からしたら結婚してもらいたいよね、ってふと思って」
私の花嫁姿を見たいのは、きっと祖母だけじゃなく両親も同じだろう。あれこれ考えているうちにそう気づいたのだが、大地は違うらしい。
「別にいいんじゃない、しなくても。姉ちゃんが一生独り身でも、俺が面倒見てやるよ」
「……やっぱり結婚しよう」
それは大地の将来のお嫁さんに嫌がられそうで、苦笑いして呟いた。



