前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 先輩との関係は悪化する一方で、久夜さんが望んでいる仲になるのはどんどん難しくなっている。久夜さんの力になりたいのに、私のせいで……。


『あなたに明神先生の妻を名乗る資格があるとは思えない』
『あいつのために無理してる伊吹を見ると腹が立つし……壊してやりたくなる』


 ふたりの言葉が幾度となく蘇っては胸を刺し、自分の存在価値がまた見えなくなっていく。なんとか前向きに考えようとしても、あっという間に闇に引きずり込まれる感覚を覚える。

 そのうち心臓がドクドクと脈打つのを感じ、異常に息苦しくなってきた。


「はぁ……は……っ」


 なに、これ……吸っても吸っても酸素が入ってこない。冗談じゃなく死にそうなくらい苦しい。

 ドライヤーが手から離れ、大きな音を立てて床に落ちる。私は痛む胸を押さえ、その場に膝から崩れ落ちた。

 どうしよう、私どうなるの? 久夜さん、助けて……!


「伊吹!?」


 心の中で名前を呼んでいたそのとき、パニック状態の意識に突然彼の声が響いた。

 すぐさま駆け寄ってきて肩を抱かれ、若干の焦りを滲ませつつもドクターの顔になっている久夜さんが視界に入る。