前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

「ついでに、少しだけお話できるかしら?」


 含みのある声で言われ、ドキリとした。なんだろう、嫌な予感しかしない。

 私の顔から笑みが消えたとき、私たちが話していることに気づいた末永さんが「伊吹ちゃん、先に休憩入ってきていいよ」と気を遣ってくれる。

 気が進まないとはいえここで断れる勇気もなく、お言葉に甘えることにした。

 図書室を出てとりあえず院内のカフェに向かおうとしたのだが、北澤さんは「長くならないから」と制し、人が少ない通路で立ち止まった。

 私に向き直り腕を組む彼女は、そこはかとない威圧感を漂わせて口を開く。


「単刀直入に言うけど、私見ちゃったのよ。先週、あなたがご主人じゃない男性とふたりで歩いているところ」


 予想外の言葉に、私は目を丸くした。

 先週って、きっと重南先輩と会った日のことだよね。北澤さんもあの辺りにいたんだ。もしや、それで誤解しているのでは……。


「横断歩道でイチャイチャしちゃって、恥ずかしいったらありゃしない」
「違うんです! あの人は、久夜さんの弟さんで」


 手と首を横に振り慌てて弁解するも、彼女は訝しげに眉をひそめる。