前略、結婚してください～過保護な外科医にいきなりお嫁入り～

　祖母の声を聞き、小さい鉛がつけられたように気持ちが重くなった。

　エンディングノートがどういうものかは知っているけれど、祖母が書いていたとは。はっきり余命がわかっているわけではなくとも、彼女は旅立つ用意を着々と進めているのだと思い知らされる。

　やや離れたところで足を止めたとき、梨乃ちゃんが明るい調子で言う。


「あ、〝伊吹の花嫁姿を見る〟って書いてある～」
「だから本気だって言っただろ？　あの子が女として幸せになるのを、この目で見届けたいからねぇ」


　優しい声が耳に届き、胸が締めつけられた。

　冗談……ではなかったのか。ただからかっているだけだと決めつけてしまって、申し訳なく思うと同時に悩み始める。

　私が結婚なんて、いつになるかわからない。でも、祖母の願いはできることなら叶えてあげたいし、どうしたらいいのだろう……。