とはいえ、すぐに表情が緩んだので、本気で怒っているわけではないのは明らかだ。あの頃に比べるとだいぶ雰囲気が柔らかくなったと思う。
あれだけ敬遠していた人なのに、普通に話せている。この調子でいけば、もしかしたら新しい関係を築けるかもしれない。
信号が青に変わり、人々が一斉に歩きだす。希望の芽が少し出始めた私も、一歩を踏み出した。
すると同じ歩幅で隣を歩く先輩が、これまでに見たことのない物憂げな面持ちになっていることに気づく。
「伊吹、俺は──」
彼がなにかを言いかけたとき、後方からドンッとぶつかられた。サラリーマンが「あっ、すみません!」と謝るも、早足で横断歩道を渡っていく。
それを目の端に映し小さく声を上げてよろけた私を、先輩が咄嗟に抱き留める。
肩を抱かれ、もう片方の手で腕を掴まれたその瞬間、再び体育館倉庫での記憶がフラッシュバックした。
「いやっ」
反射的に先輩の身体を押し退けて離れる。直後、守ってもらったのにとても失礼なことをしてしまったと反省し、「ご、ごめんなさい……!」と謝った。
あれだけ敬遠していた人なのに、普通に話せている。この調子でいけば、もしかしたら新しい関係を築けるかもしれない。
信号が青に変わり、人々が一斉に歩きだす。希望の芽が少し出始めた私も、一歩を踏み出した。
すると同じ歩幅で隣を歩く先輩が、これまでに見たことのない物憂げな面持ちになっていることに気づく。
「伊吹、俺は──」
彼がなにかを言いかけたとき、後方からドンッとぶつかられた。サラリーマンが「あっ、すみません!」と謝るも、早足で横断歩道を渡っていく。
それを目の端に映し小さく声を上げてよろけた私を、先輩が咄嗟に抱き留める。
肩を抱かれ、もう片方の手で腕を掴まれたその瞬間、再び体育館倉庫での記憶がフラッシュバックした。
「いやっ」
反射的に先輩の身体を押し退けて離れる。直後、守ってもらったのにとても失礼なことをしてしまったと反省し、「ご、ごめんなさい……!」と謝った。



