前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

「あれから、どうしていたんですか?」


 目は合わせられないままだが問いかけてみた。先輩も前を見据え、嫌がる素振りはなく答える。


「母親が実家に帰ることにして田舎に引っ越した。しばらくして母親が死んで親戚の家にいたけど、高卒で働きだしてからはひとりで気楽にやってる」


 淡々と明かされる彼の過去は、やはりつらいものだった。お母様はシングルマザーだったそうだし、死別で彼が受けたであろうショックは計り知れない。

 中学時代にあんなに荒れていたのも、家庭環境が大きく関係していたのかもしれない。

 そんな先輩も、久夜さんから聞いたところ交通誘導やイベントの警備をしているらしい。おそらく今はこの辺りの現場で働いていて、帰宅途中なのだろう。

 先輩もきっと、あの頃とは変わったんだろうな。彼なりにいろいろあったのだと思うと、恐れるよりも同情に近い気持ちが湧いてくる。


「月並みなことしか言えませんが、本当に大変でしたね。でも立派です。今は不良の面影もなくまともに生活していらっしゃるようで……」
「ケンカ売ってんのか」


 正直な発言をするとギロリと鋭い目を向けられ、やっぱり怖い!と震え上がった。