「久夜さん、すごくカッコよかったです。貴重なスーツ姿だし」


 素直な気持ちを口にすれば、彼は自分の魅力にまったく気づいていない様子で首を傾げる。


「スーツ? 窮屈で早く脱ぎたいんだが」
「ああ、もったいない……」


 またまた心の声を漏らしてしまった。直後、アンニュイな調子でネクタイを緩める瞬間を目撃し、胸が激しくときめく。

 白衣もスーツも似合っていて、ビジュアル的にも最高の旦那様だ……と内心ノロケていると、久夜さんはなにやらいたずらっぽい面持ちになる。


「そんなに堪能していたいなら、今夜は伊吹に脱がせてもらおうかな」


 突然ハードルの高いミッションを出されて、ギョッとする私。


「わ、私が!?」
「そう。でもそれまで俺が我慢できないから……」


 意味深な発言と同時に赤信号で車が停まった。運転席から私の頭に手が伸びてきて、流れるように唇を奪われる。

 ……もう、どれだけあなたを好きにさせるんですか。

 悶えたくなる可愛いキスのあと、甘くなる頻度が多くなってきている彼を見つめて、私は幸せな笑みをこぼした。