まったく鼻を高くしない謙虚な彼だが、これまで何人もの命を救っているのは事実だ。今はページをめくっているその骨張った手も、真剣に文字と図を追う瞳も、とても尊いものだと思う。
これ以上邪魔をしてはいけないと、「またなにかありましたら、いつでもお声かけください」と言い、踵を返そうとした。しかし、ひとつ伝えておかねばならないことを思い出し、足を止めて先生に向き直る。
「あと……さっき祖母が言ったことは冗談ですので! すみません、忘れてください」
そこで彼はようやくこちらを向いたが、私はその顔を見ることもせずにぺこりと頭を下げ、そそくさと歩き出した。言わなくてもわかっているだろうけれど、念のため。
カウンターが見えるところまで来ると、祖母の周りに先ほどの女子たちが集まっていた。こちらに背を向けて、なにやら話し込んでいる。
「エンディングノート?」
「そう。自分が死んだあとお葬式はどうしてほしいかとか、死ぬまでにやっておきたいこととか、希望やメッセージを書くんだよ」
これ以上邪魔をしてはいけないと、「またなにかありましたら、いつでもお声かけください」と言い、踵を返そうとした。しかし、ひとつ伝えておかねばならないことを思い出し、足を止めて先生に向き直る。
「あと……さっき祖母が言ったことは冗談ですので! すみません、忘れてください」
そこで彼はようやくこちらを向いたが、私はその顔を見ることもせずにぺこりと頭を下げ、そそくさと歩き出した。言わなくてもわかっているだろうけれど、念のため。
カウンターが見えるところまで来ると、祖母の周りに先ほどの女子たちが集まっていた。こちらに背を向けて、なにやら話し込んでいる。
「エンディングノート?」
「そう。自分が死んだあとお葬式はどうしてほしいかとか、死ぬまでにやっておきたいこととか、希望やメッセージを書くんだよ」



