前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 茶化しているようでいて真面目に心配してくれているのはわかっている。祖母の優しさで心なしか気持ちが軽くなるのを感じ、私は自然に笑って「ありがと」と返した。

 しばし話をして祖母が病室に戻っていったあと、私はさっきからやや気になっていたことを末永さんに問いかける。


「それにしても末永さん、前にも増して医者の嫁事情に詳しくなってませんか?」
「あー……あの腹黒ドクターがいろいろ教えてくれたから」


 なんとなくぎこちない調子で口にされたのは、栄先生の呼び名。

 実は焼き鳥屋で会ったあの日、私と別れてからふたりで飲み直したらしい。そしてなんと、酔っ払った末永さんを栄先生が自宅に連れ帰って介抱したというのだ。

 それを聞いただけで私は大興奮だった。末永さんいわく『なにもなかった』そうだが、あれ以来栄先生の名前が出たり姿を見たりすると、彼女は明らかに挙動不審になっている。

 今もなぜか私と目を合わせようとしないので、ちょっぴりいたずらっぽく顔を覗き込んで探ってみる。