今夜も目一杯愛されたあとベッドの中で余韻に浸っていると、寄り添う彼が私の髪を撫でる。


「伊吹、キスが上手になったな」


 なにげなく口にされたひとことは私にとっては恥ずかしくて、かあっと顔が熱くなる。


「そ、そうですかね……」
「キスもそれ以上のことも、俺が全部教えたんだと思うと嬉しいよ。まあ、まだ序の口だけど」


 涼しげな表情で言う彼に、あれで序の口!?と物申したくなる。だって、あんな場所を舐めたり弄られたり、もう十分とんでもないことをされているのに!

 今しがたの淫らな行為を思い返して悶えたくなるも、久夜さんはあっさりと話を方向転換させる。


「ところで、結婚式はどうしたい? チャペルでやりたいとか神前式がいいとか、いろいろ理想があるだろ」


 そういえば、式についても考えなければいけないのだった。先生の立場もあるのでやらない選択肢はなく、できれば年内に挙げようと話しているが、そのためには早く動かなくては。

 しかし自分が結婚できると思っていなかった私には、女の夢というものが欠如しているのだ。