前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

「あ……は、はい! ご案内いたします」


 慌ててカウンターから出て先生と歩き始めると、黙って様子を窺っていた梨乃ちゃんたちが、黄色い声できゃあきゃあと騒ぎだす。


「今のプロポーズ? プロポーズ!?」
「イブちゃん脈アリだよ、きっと!」


 彼女たちに混ざって、祖母もご満悦そうに「マジ卍だわ」とか言っている。いろいろとツッコみたいが、私もびっくりしてそれどころではない。

 だって……明神先生と、初めて本以外のことでやり取りをしちゃった。

 からかわれているだけだとしても嬉しくて、鼓動は速いままだ。女性関係についても彼自身の口から聞いたことはなかったから、すごく貴重な機会だった気がする。

 先生って、手術以外のことには無頓着そうなイメージだったけど、愛する人は大切にするんだな。そんなところもますます好印象だし、そのお相手になる人がとても羨ましい。

 嬉しさと切なさが入り混じった気分で彼の半歩先を歩き、医学専門書コーナーの外科手術書が並べられている棚へ案内する。

 中でも、研修医が読むものとはまた別の、さらに高度な手術テクニックが記されている書籍の列を手で示した。