「ひどいむくみじゃなさそうだし外見的な症状はないから大丈夫だと思うが、予防のために医療用の弾性ストッキングを履いたり、足首を回したりこまめに身体を動かすといい」
「なるほど、気をつけます」


 無知な私にいろいろと指南してくれて、とても頼りになる旦那様だ。『なにかあったときにも安心』と言っていた母に同意する。


「やっぱり先生がいると心強いですね」


 ふくらはぎを優しくマッサージしてくれている彼に微笑みかけると、上目遣いでどこか意味ありげな視線を向けられる。


「そろそろ家では〝先生〟って呼ぶの卒業しないか? それはそれで背徳感があって悪くないんだが」


 背徳感を味わえるのもまんざらじゃないらしくて、ちょっぴり笑ってしまう。でも確かに、もう胸を張って夫婦だと言えるのだし、旦那様をいつまでも先生と呼んでいたらおかしいよね。

 ほんの少し勇気を出して、初めて名前を口にする。


「……ひ、久夜さん」
「よくできました」


 満足げに目を細めた彼は、私のふくらはぎに手を添えたまま、すねの辺りにチュッと口づけた。脚にキスされるなんて妙にドキドキする。