気だるげな調子でやってきた彼は、脚をマッサージする私を見てやや怪訝そうにする。


「脚、どうした?」
「今日は立っている時間が長かったので疲れちゃって。私、むくみやすいんです」


 へらりと笑うと、先生が突然私の前にしゃがみ、ルームウェアのショートパンツから伸びる私の片脚を軽く持ち上げた。

 驚いて目を丸くする私をよそに、彼はふくらはぎから脚全体を観察したり、すねの部分を押したりする。

 どうしたんだろう。そんなにじっくり生脚を見られると恥ずかしいんですが……。

 内心どぎまぎするも、いつの間にかドクターの顔になっている彼は真面目な調子で口を開く。


「むくみは逆流防止弁に負担がかかることで起こる、下肢静脈瘤のサインのひとつだ。放っておくと悪化するかもしれない」
「えっ、そうなんですか!?」


 難しい名称が飛び出し、しかもあまり穏やかではなさそうな内容なので私はギョッとした。むくみなんて軽い身体の変化だと思っていたが、意外にも病気の症状でもあるらしい。