肩からシャツが滑り落ちる。誰にも見せたことのない下着姿が間接照明の灯りにさらされ、つい胸を隠すように腕を掴んだ。

 熱を孕みつつも真剣な瞳を向ける彼は、私の髪を掻き上げて頬に手を当てる。


「もう一度聞く。伊吹はどうして俺を選んだの?」


 図書室でされたものと同じ問いかけをされ、幾度となくドキリとする。そういえば、きちんと告白はしていなかったっけ。

「そ、それは……」とまごついていると、ふいに先生の顔が私の耳に近づく。そこを戯れるみたいに優しく啄まれ、くすぐったさで意図せず色っぽい声が漏れた。

 恥ずかしくて口元に手を当てたものの、先生の手で除けられてしまう。彼は綺麗な瞳で私をじっと見つめ、ねだるように言う。


「ちゃんと君の口から聞きたい。感じてる甘い声も、俺を好きだって気持ちも」


 ……そう、いい加減にはっきり伝えなきゃ。

 今ここには便箋もノートもない。私の口で言葉にするんだ、十年も胸にしまい続けていた想いを。


「……好き」


 たくさん息を吸い込んだわりには小さいけれど、ちゃんと声にして紡ぐ。


「好き、だから……先生に、私の身体をあげます」