前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 いまだに囚われているのが悔しくて、膝の上に置いた手をぎゅっと握っていたものの、隣から柔らかい声が届く。


「ねえ、伊吹。頑張って話している君が可愛すぎて、すごく抱きしめたいんだけど」


 丸くした目を向ければ、先生がこれまでに見せたことのない愛おしそうな表情をしていて胸が鳴った。

 握った手の力を緩め、せめてもの返事でこくりと頷くと、壊れ物を扱うみたいにそっと腕を回される。

 思いきって身を預けた私は、彼の腕の中はこんなにも温かくて安心するものだったのかと驚いた。

 強張っていた身体から徐々に力が抜け、逆に彼の腕は確かめるようによりしっかりと抱きしめる。

 振動が伝わるんじゃないかというほど大きな心臓の音を感じていたら、私の髪に埋められていた唇が動く。


「平気?」
「……はい」
「もっと触れたい」


 吐息交じりの声が切実そうに囁き、その色気にクラクラしつつ再び頷いた。

 すると、彼は腕を解いておもむろに立ち上がり、「おいで」と私の手を取る。連れられてきたのはムーディーな彼の寝室で、ますます鼓動が激しくなるも従順に手を引かれたままベッドに腰かけた。