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あの日から、私にとって明神先生は唯一無二の存在となり、彼に抱く感情はいつの間にか恋心へと変化していた。
その想いを伝えることなく退院した私は、気持ちを奮い立たせて学校生活に戻った。すると驚いたことに、入院中に重南先輩は転校していたのである。
体育館倉庫で『最後』だと言っていたのはこういう意味だったらしい。先輩にどんな事情があったかはわからないけれど、恐怖から解放され、さらにあの一件を校内で知る人は誰もいなかったので、ひとまず胸を撫で下ろした。
先生の教え通り、辛くなったり落ち込んだりしたときは家族や友達を頼るようにしたら、ずいぶんラクになって人見知りもマシになったと思う。ただ、男性不信だけは治らなかったが。
いつからか司書を目指すようになって、就活中に白藍総合病院の求人を発見した瞬間は胸が高鳴った。ここに就職すれば、また明神先生に会えるかもしれない、と。
入院中に図書室のお世話になっていたこともあり、迷わずここを選んだ。そして、立派な外科医になっていた先生を見つけ、私はひとり胸を熱くしていたのだ。



