前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 ……閉め切っていた窓が開け放たれたかのごとく、心に澄んだ空気がすうっと流れ込む感覚を覚える。同時に、なぜだか目頭が熱くなった。

 六十年後の約束の意図が、なんとなくわかった。たぶん内容はなんでもよくて、約束を守らなくちゃ、と私に思わせることが狙いだったんだろう。それまで死ねなくするために。

 なんて独特なやり方。でも型にはまらないこの人と話していると、〝人生なんて上がったり下がったりの繰り返しだから、もっと気楽でいいんだよ〟と言われている気がする。

 それをすんなり受け入れられるのはきっと、出来損ないの私でもここにいるだけで意味があると認めてもらえたから。

 揺れる視界に、おもむろに私の頭へ手を伸ばす彼の姿が映る。


「君は素敵だよ。たとえ手紙だとしても自分の気持ちを正直に相手に伝えられる、心の強い人だから」


 そっと頭を撫でて励まされた途端、積を切ったようにポロポロと涙がこぼれた。悲しくはなくて、ただただ胸の中が温かい。

 先生は病を治すだけのお医者様じゃない。萎れた心に息吹を吹き込んで、私を救ってくれた──。