「たいした価値のない自分なんて無意味だからどうなってもいい。いっそ死んでもいいやって思うんです。でもその前に、先生の役には立てるんじゃないかなって……」
先生が生身の人間の手術でうまくいかず自信を失くしているのなら、私で練習してくれて構わない。どうせ死ぬのなら、誰かの役に立って終わりたい。
もちろん、そんな行為は犯罪だし不可能だとわかっている。ただこの思いを吐き出したかっただけなので、先生をその捌け口にしてしまったことを詫びようとした。
ところが、しばし思案した彼の口から意外な言葉が飛び出す。
「そうだな、じゃあ……六十年後、君をもらう約束をしておく」
無表情だが黄昏の色に染まる美しい横顔を凝視し、私は目をしばたたかせる。
「六十年後!?」
「そう。俺が〝また現役で執刀医をやりたい〟って思ったら、君で手術の練習をさせてもらうから」
六十年後っていったら、先生は八十歳を超えているよね。私も七十四歳のおばあちゃんだ。なんでそんな無茶苦茶なことを? いや、私も人のことは言えないけれど……。
先生の意図が読み解けず難しい顔をしていると、彼は神秘的なグラデーションの空を見上げて話しだす。
先生が生身の人間の手術でうまくいかず自信を失くしているのなら、私で練習してくれて構わない。どうせ死ぬのなら、誰かの役に立って終わりたい。
もちろん、そんな行為は犯罪だし不可能だとわかっている。ただこの思いを吐き出したかっただけなので、先生をその捌け口にしてしまったことを詫びようとした。
ところが、しばし思案した彼の口から意外な言葉が飛び出す。
「そうだな、じゃあ……六十年後、君をもらう約束をしておく」
無表情だが黄昏の色に染まる美しい横顔を凝視し、私は目をしばたたかせる。
「六十年後!?」
「そう。俺が〝また現役で執刀医をやりたい〟って思ったら、君で手術の練習をさせてもらうから」
六十年後っていったら、先生は八十歳を超えているよね。私も七十四歳のおばあちゃんだ。なんでそんな無茶苦茶なことを? いや、私も人のことは言えないけれど……。
先生の意図が読み解けず難しい顔をしていると、彼は神秘的なグラデーションの空を見上げて話しだす。



