前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~


 それから三日後、図書室で借りてきた本をひとりベッドに座って読んでいたときだ。突然例のイケメン研修医が病室にやってきて、私はひょこっと肩を跳ねさせた。

 間抜けな顔でただ見上げていると、私のそばに来た彼は無愛想なまま口を開く。


「この間は、無責任なことを言って悪かった。皆が皆、学校生活を楽しんでいるわけじゃないのにな」
「え……」


 面食らった私は、パチパチと瞬きを繰り返した。まさか私の気持ちを汲み取って、しかも謝られるとは思わなかったから。

 呆気に取られているうちに、彼は「じゃ」と言って踵を返す。あっという間に去ろうとするので、つい引き止めたくなる。


「待っ……明神先生!」


 覚えたての名前を呼び、足を止めてゆるりと振り返る彼に問いかける。


「それを言うためだけにわざわざ来たんですか?」
「だめ?」


 小首を傾げる彼は、大人なのに可愛らしい。自然に笑いがこぼれ、首を横に振った。

 この瞬間、久しぶりに笑えた気がした。胸がくすぐったくなる不思議な感覚も初めて覚える。この正体がなんなのかは、わからないけれど。