前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 学校だけじゃない。生きている意味はあるのだろうか。〝まともにしゃべれもしない〟〝暇つぶしの価値〟しかない私に──。

 車椅子を動かすのに慣れた頃、気分転換にやってきた病院の屋上庭園で、ただぼんやりと空を見上げて不毛なことばかりを考えていた。

 それが日課となっていたある日、ベンチに座っているひとりの男性に気づく。白衣を纏った、寝癖みたいに無造作な髪型の若そうなドクターだ。

 なにげなく彼の顔を見た私は目を見張った。絵に描いたように整った横顔に、夕日の光を受けて輝く涙が一粒こぼれ落ちたから。

 え……泣いてる?

 大人の男性が泣く場面は見たことがなくて最初はギョッとしたのだけれど……その涙する横顔はあまりにも綺麗で、目が離せなくなった。

 男性の、しかも泣いている姿を綺麗だと表現するのはおかしいかもしれないが、本気で初めてそう感じたのだ。

 ついじっくり眺めていると、彼が気づいてこちらに目線を移す。その流し目がまた美しく見えたのは、瞳が夕暮れの海のようにキラキラしていたからだろうか。