前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 うるさいエンジンとブレーキの音、全身に走る衝撃と痛み。

 それらは遠ざかる意識と共に薄れていき、人生最後の日はこんなにも最悪なのか……と、虚しさだけがうっすらと残った。


 ──目が覚めて最初に視界に入ったのは、見覚えのない天井とひどく心配する家族の顔。

 どうやら私は、信号のない横断歩道で事故に遭ったらしい。幸い足の骨折と打撲だけで済んだと聞かされ、安堵すると同時に複雑な気分になった。

 事故に遭うまでの一連の出来事もすぐに思い出したので、頭を打って記憶喪失になっていたらよかったのに、というのが不謹慎だが本音だったのだ。

 とはいえ、しばらく入院になるのは都合がよかった。先輩だけでなく友達にも会いたくないし、家族にすら諸々の事情は打ち明けられなくて、顔を合わせるのが気まずかったから。

 入院中、先輩の言葉がずっと頭の中を巡っていた。

 彼の言う通り、友達ができたように感じていたのは自分だけで、結局ひとりぼっちのままなのかもしれない。

 そう考えると、見つけたはずの存在価値は再び埋もれてしまって、学校に行く気力もなくなる。