それからというもの、重南先輩はなぜか私を構い始めた。といっても、宿題をやらされたり委員会の用事を押しつけられたりと、下僕同然の扱いだったが。

 不思議とそれがいいきっかけで、クラスメイトからは「重南先輩とつるんでいるなんてすごい!」と一目置かれ、話しかけられるようにもなった。私はただ逆らえないだけだったのに。

 結果的に友達と呼べる人も増えたので、先輩には感謝するべきなのだろう。彼も、関わってみれば乱暴で怖いだけの人ではないとわかり、時々見せる笑顔からも優しさを秘めているはずだと感じていた。


 しかし、半年ほど経った頃からどうしてか先輩の態度が徐々に変わっていった。

 私にお酒や煙草を勧めたり、不良グループとの遊びに誘ったり。これまでとは違うレベルで、さすがにそれはできないと断っていたのだが、彼の要求はエスカレートしていく。

 だんだん怖くなり、彼を避けるようになってしばらくした頃……。

『放課後、体育館倉庫に来い』と呼び出され、嫌な予感を抱きながらもテスト期間中で誰もいないそこに向かった。

 埃っぽい中で跳び箱に座って待ち構えていた先輩は、私を見てなにか企みがありそうな笑みを浮かべる。