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「引きこもりの彼女じゃん」


移動教室で廊下を歩いている時のことだった。


そんな声が聞こえてきて、あたしは反射的に振り向いていた。


しかし、そこには誰もいない。


でも確かに聞こえて来た。


『引きこもりの彼女じゃん』と……。


きっとまた香澄たちの仕業だろう。


どこかに隠れてあたしの反応を見ているに違いない。


それなら無視するまでだった。


あたしは早足で教室へと向かった。


他の生徒たちをかき分けて、聞こえて来た声から逃げるように足を進める。


そして渡り廊下に差し掛かった時だった。


不意に肩を掴まれて悲鳴を上げそうになっていた。


振り向くとそこには会話もしたことのないクラスメートの男子が2人立っていた。


「な、なに……?」


名前は確か、明智君と三好君だ。


その顔を見た瞬間あたしは咄嗟に身構えていた。


2人とも制服を着崩し派手なピアスをつけている。


クラス内で仲がいいのは香澄だ。