「海は見ず知らずのあたしを助けてくれたの。元々優しい人だったんだよ?」


「それはわかるけど、でも本性は違ったでしょう?」


「だから、そうじゃないの」


あたしは軽く苛立ちを感じて息を吐きながら言った。


「海は元々優しいから、人格が変わったわけじゃなくて、元に戻っただけなんだよ」


あたしの言葉にコトハはキョトンとした表情を浮かべている。


「あの音楽の効果も、そりゃああったかもしれないけどさ。やっぱり人格が変わるなんてありえないって」


「……本気でそう言ってるの?」


コトハの表情が見る見る歪んでいく。


その中にはあたしへ不信感や嫌悪感が滲んでいるようで、うろたえてしまった。


「どうしたのコトハ、怖い顔して……」


「星羅がそう思いたいなら別に止めないよ。だけどアプリの効果は甘く見ない方がいいと思う」


コトハの真剣な表情にあたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


こんなに真剣コトハを始めてみたかもしれない。


笑ってはいけない雰囲気に気圧されてしまう。