微笑んだあたしを見てこめかみをひくつかせ始めたのだ。


「なに笑ってんだよ……俺のことバカにしてんだろ!」


海の声はついに怒りで震え始めた。


顔が赤くなり、目は吊り上がり、その見た目はまるで赤鬼だ。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで、慌てて左右に首を振って見せた。


「バカになん……!」


そこまで言って、喉に言葉が張り付いた。


海の怒りが怖くて言葉を続ける事ができなくなった。


「なんだよ……やっぱりお前は俺をバカにしてたんだろ! 一番近くにいて俺のこと笑ってたんだろ!!」


海があたしの腕を掴む。


「……っ!!」


あたしはその手を咄嗟に撥ね返していた。


海が眉間に深いシワを寄せてあたしを睨む。


恐怖で失われてしまった言葉はまだ戻って来ない。


あたしが今の海を説得するのは無理だった。


焦りに背中に汗が流れて落ちていく。


「お前……っ!」


手を振りはらわれたことで更に怒りに顔を赤くした海があたしに再度手を伸ばす。