「おーい、そこぉ。とれた金集むるけん、トロッコに乗せてくれんか」
 
向こう側から、徒樹と同じ、黒髪の少年がトロッコを押しながら来た。

どこか珍妙な雰囲気が漂う少年だ。

言うならば、「非凡」な雰囲気。

地方特有のなまりのせいか、やたらとひょろ長な背格好のせいか。

「ハア…、きつかね…。たいぎゃきつかぁ…」

じわりと汗の滲んだ額を、腕で拭った少年の名は、李 旭宇(リ シューユー)。

いや、今は、スメイ 旭宇。

「わしん事は、シュー君でも、ユーでもよかばい。あたん名は?徒樹は知っとるばい」

「ヒルダ。H no.18」

無表情でヒルダは答えた。不機嫌だ。

まるでこの状況を、つまりは奴隷としての労働を、どこか楽しんでいる様な、少年の能天気さに、心が嫌悪を示している。

何がシュー君だ、ユーだ。そのズタボロの服に、S no.6と書かれている分際で……。

ーー僕達は、ゴミクズ。家畜。労働を強いられる、人以下。


ならば。

クズ同士が優劣を競って、どうなる?
あまりにも、ーー不毛だ。

ヒルダは掘り出した金を両手でつかみ、よろよろと持ち上げ、優しくトロッコに積む。