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……パチパチ。
体育館の天井で拍手の音が騒ぐ。それだけで泣きそうになった。
もう見ることがなくなる体育館に、僕は感謝を告げた。
新型コロナウイルスの影響で規模が小さくなり、一時間にも満たない僕らの卒業式はそうして幕を閉じた。
校長先生のおかげでなんとか開かれた卒業式だったけど、他の地域ではなかなかやっていない。
だからこそ、僕たち学年の中で流星は流れた。簡単に言うと、みんな泣いてた。
でも、その流星は悲しみと寂しさだけじゃない。これから歩む未来への期待と希望もたくさん詰まっていることだ。
僕はその日、一分一秒も無駄にはしたくなかった。
多くの同級生や先生と写真を撮って、最後には全員で集合写真をパシャリ。
その一方で、君は嬉しいのか寂しいのかよく分からない表情をしていた。
できれば、寄り添ってあげたい。でも、僕にそんなことは出来ない。
だって、君はきっと綺麗事を嫌うだろうから。君が傷付くだけだろうから。
それを避けたかった。
そう思っていたら、君はいきなり「さよなら」と叫んだ。「ありがとう」と叫んだ。「大嫌い」と叫んだ。
息を整えてから最後には同級生や先生を見て、「大好き」と叫んだ。
それは紛れもなく、感謝だと僕も悟った。そして、全てを知る。
君は君を虐める同級生を恨んではいないのだと。
君は弱さを知りながら、強くなれたのだと。
君はみんなが大嫌いでも、感謝しているのだと。
君の輝かしい笑顔を見て、君を虐めていた同級生たちも何も言えないといった様子だった。なぜなら、君は泣いていたから。
どんなに嫌いでも、虐められても、結局君は同級生も先生も好きなんだ。
君の笑顔の奥に、辛さなんて見えない。むしろ、君なりの優しさがほんのりと見えた気がした。
そして、君の足元にまだ咲いたばかりのワスレナグサがあった。
ワスレナグサの花言葉。それは『私を忘れないで』。
もしかしたら、君が刹那に想った最後の祈りかも。
僕はそんなことを思いながら、君と会える最後の日に高く高く、もっと大きく手を振った。
「またね!桜!」
「ありがとう!春馬くんも元気で!」
END