「僕以外の誰かが芙羽梨さんを幸せにすることは、絶対にあり得ません。芙羽梨さんのためなら、僕は何だってできます」



「っ…」



泣きそうになるのを必死にこらえる。



詩音先輩の想いが、熱が、声の力強さでわかるから。



ここで泣いてなんかいられないよ。



「…そうか」



お父さんは、さっきよりも弱々しい声でそれだけつぶやいた。



憂いを帯びたお父さんの表情は、なんだか寂しそうにも見える。



「…君が電話をくれたとき、芙羽梨を見知らぬ他人と一晩過ごさせるなんてと思った。止めさせる気でいたよ」