渇愛の姫




「……」

なにこのバイク。

大きくて跨がれない。スカートだし。



「あ、ありがとう…」


もう既に乗っていた結雅はわざわざ降りて私を乗せてくれた。

結雅は無口だけど優しい。
あの曖昧な記憶以外笑った結雅を見てはいないけれど。




「ここでいいよ。ありがとう」


本当はあと少し行ったところにあるけど、なんとなく家を知られたくない。

確かに結雅たちはいい人だし、信用出来るかもしれない。けど家は私の唯一落ち着ける場所だから。






「…気をつけろよ。」



まだ家が見えないので察したのか、結雅は私が見えなくなるまでそこにいた。