【短編】卑屈姫の神隠し


「まあまあ待て待て」

笑いながら男はリツカを自分の膝の上に座らせた。

「何ですか…?私、なにか悪いことしたんですか?風俗は嫌です」

震えそうになる声を何とか絞り出し、リツカは男の青い目を見上げた。
綺麗な顔がより恐怖を増幅させる。

「はあ?風俗?」

何を言ってんだ、と聞かれたがそれはこちらの台詞だ。

最初からこっちはあなたが何を仰っているのか分かりませんが。

「そこの女!いくら何でも非常識ですよ!」

またもやオールバックが何か叫んだ。
リツカは思わず眉をひそめた。

人を突然誘拐して来た人に非常識とか言われた。

あまりにも心外だった。

「リツカ、お前は何か勘違いしているようだけどな。別に俺はヤクザでもなければ、犯罪者でもない」

「ここに来ることに同意した記憶はありませんが」

「赤い雲と言われたら分かるだろう」

分かるだろう、じゃない。

「通り魔っていうんですよそれは」

呆れ声を出してしまう。