爽やか王子の裏側は










あれ


おかしいな


いつもはここらへんで聞こえるはずの音が聞こえない



……


うん、聴こえない


どれだけ耳をすましても、聞こえるのは自分の足音と風で揺れるそこら辺の雑草の音


音楽室に向かう


いつもと違ってしんとした音楽室


扉の向こうにも誰の気配も感じない


そっと扉に手を開ける


中に入るけど、やっぱり誰もいない



今日はやらないのか?


…なんだよ



小さくため息をつき、黒いピアノに触れる


これを毎日弾いていた人は…どんな人なんだろう


俺にはメロディを奏でることはできないけど


ポン


と音を立てるなんの音かわからない鍵盤


ブランケットに目を落とし、ここにおいていけばきっと本人の手に帰るだろうけど



と、昨日と同じことを考える



やめよ。


直接渡そう



で、昨日と同じ結論になる



俺は旧校舎を後にした