「ありがとう…ございます」



ぎこちなく受け取る



「じゃ、代償としてまた放課後ピアノ弾けよな」



…は!?



「な、なんですかそれ!?」



代償だと!?



「いいだろ?ピアノ弾くだけじゃん」



いやいや、え?



「な、なんでですか!!」



「は?ピアノが聞きたいからに決まってんじゃん」



な、なにその当然だろみたいな話し方



「いやなのか?」



「い、いやっていうか…」



なんでだよって感じなんですけど



「俺お前のピアノ好きなんだよ」



…ドキ



「誰が弾いてるかわからない時から聴いてた」



い、いつからだそれ…



「と、いうわけでよろしく。」



ニヤッと笑って背を向けた園川くん


いや!まって!


「ほ、放課後部活ないんですか?」


「放課後は大体自主練だよ」


そ、そうなのか…


自主練行けよ…


んー


だ、代償なら…これでどうだ!



「園川くん!」


「は?」


私はカバンに入れていたカツ丼を出して園川くんに差し出した


「これでどうですか!代償!」


「え、これ…お前が作ったやつ?」



ええそうですとも。女子力のかけらもないカップケーキやクッキーなんかじゃなくカツ丼です


「カップケーキと交換です!」


「…ふ、フフ…」


思わずというように呆れた笑顔を溢す園川くん


なんだ…この人よく笑うじゃん


「もらっていいわけ?」


「はい!フェアにいきましょう!」


園川くんみたく変な言いがかりをつける私


「フェアねぇ…」


そんなことを言いながら私の差し出したパックに入った鶏肉のカツ丼を受け取る


「でもまぁ…変に女子力アピールしてくる豚よりも俺はこっちの方が好きかも」


豚じゃなくて鶏肉だけどね。しかも胸肉。


「サンキュ、西村」


歯を見せてくしゃっと笑うその顔に高鳴った胸には流石に気付かないふりは出来なかった



「あ、でも」



教室の入り口で再びこっちを振り返った園川くんは今度はいたずらな見慣れた笑みを浮かべた



「ピアノは弾けよ?」



な!?!?



そ、それは


「フェアじゃなああああい!」


私の魂の叫びは聞こえなかったように去っていってしまった