日菜side


時は戻って体育祭


借り物競走で私、片瀬日菜は勇気を出して想い人である横山春海くんにハチマキをもらいに行きました


『頑張って』


渡した時にそう言って微笑んでくれた春海くんは本当に王子様みたいで、


胸がキューッとしてバクンバクン言ってた



春海くんは誰にでも優しくて、本当にいい子そのもの


なんだか隣に並ぶのがちょっと落ち着かないくらいにいい人


髪の毛を切ってみたらー?っていう簡単なアドバイスも間に受けて頑張っちゃうくらい


でもだからいろんな人にモテモテしてちょっと私はモヤモヤする


でもついに今日、私は好きって言います


このハチマキを返さずに、自分のハチマキを渡してみる


借り物競走のゴール場所でハチマキを握りしめる


もらってもらえるかな


もしもらえなかったらどうしよう


まあいいや


とりあえず行ってみよう


変にソワソワする体を頑張って動かして春海くんの元にゴー



「あ!片瀬さん!」


えー?


「やっほ!俺だよ!」


えっと…誰だっけ


んー


「シカトくん」


だったはず



「あ、鹿田です」


鹿田だった


「お、お疲れ!ナイスラン」


ないすらんとは


まあとりあえずお礼言っておこう


「ありがとう」


「あ、横山もみてたよ」





春海くん


「ふふ」


思わず顔の筋肉がゆるっとした


「…っ」


春海くんのとこに行かなきゃ


「か、片瀬さん!」


うお、なに?

なんか、腕掴まれてる

なんで?


「あ、あのさ…よかったら俺と」





「は、ハチマキ…」

「日菜さん」





掴まれていない方の腕を別の誰かに掴まれる


「春海くん!」


やった!探す手間が省けた


「横山?」


「日菜さんに触らないで?」



ビリっ!


え、なに?


今、すごいピリピリした


春海くんが少し笑っただけなのに


なんか、ちょっと冷たい笑い方だけど


「え、な、」


シカトくんが口をパクパクさせてる


「離して、手」


パッとシカト君の手が離れる


「日菜さんはダメって言ったよねさっき」


なんの話かはわからないけど…春海くんの見たことないくらいの冷たい表情にひやっとする


「あ、え」


喋るの下手になってるシカト、あ、しかだ


「…」


謎の圧力を春海くんから感じる


「じゃ、じゃあ」


あれ、いなくなっちゃったしかだくん



「よかったのかな鹿田くん」


なんか言いかけてた気がした


「…名前覚えたの?日菜さん」


ん?


「シカト、あ、鹿田くんだよね」


よし、覚えた。私天才



「…やだな」


へ?