「西村」
…え
幻聴?
だって…
あまりにもタイミングが良すぎるんだもん
…聞きたい声が聞こえたんだもん
その声の主を探してしまう
ゆっくりと首を動かす
音楽室の扉が開いている
…なんて表情をしてるの
乱れた髪
少しだけ困ったように垂れた眉
荒い息を漏らす半開きの口
少し熱っぽい目
「園川くん」
「西村…やっと、見つけた」
見つけた?
探してたの?
それより…言わなきゃ
「園川くん…私…」
え、
音楽室の扉にいた園川くんは少し大股でこっちに近づいてくる
思わず距離を取ろうと足に力を入れた
だけど
「離れないで」
!
その言葉に気を取られた隙に
園川くんは私の座っていた椅子の背もたれに片手をつき、もう片手をピアノに置いて
私に顔を近づけた
物凄い至近距離にある園川くんの顔
そして鼻をくすぐる園川くんの香り
「園川…くん?」
「お願いだから離れて行かないで」
!
「…俺の前からいなくならないで」
…園川くん
少し声が震えている
相変わらず熱を持った目に見つめられ、動くことができない
「西村」
その手が私の頬に触れる
…
「好きだよ」


