爽やか王子の裏側は



ピアノの弾けない日々は淡々と過ぎて行く


放課後の一件がないと園川くんや長谷川くんとはなかなか会うことができないことに改めて気づいた


園川くんとは朝すれ違いざまにおはようと言えればいい方だ

長谷川くんはたまに昼休みに会うけれどちょっと顔を合わせづらいため階段には行きづらい


横山くんは相変わらずモテモテで日菜ちゃんの顔色は悪くなって行くばかり


しかあし!


ついに明日が体育祭である!

我ながら少しドキドキしている


「明日がんばろうね日菜ちゃん」


「うん…華乃ちゃんあのね?」





「他の女の子たちに質問されて答えてるの見たんだけどね…春海くん、明日ハチマキ渡す子がいるんだって」


「え、それは…」


「春海くんを狙っていた子がハチマキ欲しいって言ったら相手は決まってるからダメって…」


日菜ちゃんはいつもあまり変化のない顔を歪ませていた


この状況は…私の園川くん事情とほとんど同じだ


「どうしよう私…失恋しちゃう」


日菜ちゃん


こんなに感情をあらわにする時が来るとは思ってなかったな


「日菜ちゃん、大丈夫。落ち着いて」


もし、相手がいることを知っていたとしても


「日菜ちゃんは自分のハチマキ横山くんにもらって欲しい?」


「…うん」


「だったら渡しなよ」


「でも春海くんには」


「そんなの関係ないよ。日菜ちゃんが渡したいなら渡せばいい」