「園川くんが陸上を続ける理由…長谷川くんに伝えてあげたら?」
「え?」
「好きなんでしょ?陸上」
「…うん」
!
うんって言った!
「その気持ち教えてあげなよ。きっと、長谷川くんも本当のこと言ってくれるよ」
「西村?え、どういうこと」
「ちょっと…探してくる」
「は?え、おい!西村!」
園川くんの声を無視して音楽室を飛び出した
もう帰ったかな
長谷川くんが指を守ったのは
きっと…
いや
間違いなく
ピアノを弾くためなんだ
ピアニストにとって指は命も同然
突き指でさえ、その指が使えない間は練習ができない
ピアノは毎日弾かないと力にならない
でもそれはきっと陸上も同じ
あの時
長谷川くんは…
走っていた足を止めて、肩で息をする
図書室
ー
『図書室って落ち着くよね。俺好きだわ』
ここにいなかったら多分帰ってる
人が少ない図書室
先生もいない
そっと中に入り、カウンターを見た
あ
スースーと寝息を立てるサラサラの黒髪
「長谷川くん」
名前を呼んだ


