カップの中に出来た膜が弛んで波を打っていた。
「そっか、頑張ってね……お仕事」
「ありがとう……」
彼は安堵の笑みを浮かべて牛乳を一気に飲み干し、思いついたようにスウェットのポケットを探って小袋を差し出す。
「忘れてた、これ……良かったら、茅紗に似合うと思って……」
宝石店で購入したと分かる印字に薄っすらと見えるピアス、別れが過ぎる品物を目の前に少し躊躇って手にする。
「ありがと……無くさないようにしなきゃ」
「着けてあげようか」
手に握ったまま溢れ出す物を堪え、苦笑いをして返す。
「いいよ、擽ったいし……」
「開けて見て、気に入ると思うから」
まるで恋人に初めての贈り物をするように彼は嬉しそうに佇み、自分の手からカップを取って促した。
ゆっくりと息を吐き出し、そっと袋を開けて取り出すと小さな羽根が左右に揺れる。
「ありがと……可愛い……」
思わず目を伏せて返した言葉は震えていた。
不意に近付く影と回りこむように重なる唇、摘むように何度も繰り返して離れていく顔。
不恰好に笑う表情の脇の耳に揺れるピアス、片方の羽根の形に手を伸ばした瞬間だった。



