「家に帰ったら、話たいことあるんだけど、いい?」
車に乗り込むと彼は自分に雑誌を渡し、直ぐにエンジンを掛けて走らせた。
幾つか付箋紙の付いた雑誌を抱え、一番聞きたいことを隠して問う。
「此処じゃ、言えないこと?」
「少し、仕事のことで話したいことあって……」
その言葉が距離を計ろうとする名目上に被せた物に聞こえた。
多分、女性客の多い店で人気の有る彼には重荷だったのかもしれない。
それは考えなくても判ることだった。
マンションに着いて互いに部屋に入り、色々済ませた後でリビングに集まる。
浴室から抜け出した彼がキッチンで牛乳を温め、カップを二つ手にして自分に渡しながら布団に腰を下ろす。
少しだけ口に含んだのを合図に会話が始まっていく。
「話って、なに?」
「ん?……あぁ、そうだった……
来週くらいに仕事が変わるから、言って置こうと思って」
「それ、だけ?」
彼は明らかに言い難そうにミルクを口にし、カップの中と当ても無い視線を行き来させている。
何度か繰り返して飲み込み、深呼吸を一つして言った。
「時間帯も不規則になって、迷惑掛けるし……
茅紗も不安だろうし、何もしてあげられなくて、心細いと思うけど……ごめん」



