その日は少しだけ約束に反し、何度か触れるだけのキスをして眠った。
次の日の夜から当たり前の光景として広げられ、ソファーの事や昔の暮らしぶりを語った後で彼は軽くキスをして眠りに就く。
一切手出しはされず、キスも触れるだけで何事も無く時間だけが過ぎていた。
生活は相変わらずで少しだけ周りを気にする警戒が取れた頃。
あっと言う間に月日を越えてキッチンの片隅のカレンダーを捲り、自然に目の前に温かいミルクが差し出されて会話が始まる。
「今日、少し遅くなると思う」
「いつもの所で待ってればいい?」
「いいよ、悪いから……たまには先に帰って」
「じゃぁ、終わったら店に来て、もう色が落ちてるし、髪の毛」
「でも……悪いから……」
交わす言葉も敬語が取れ、髪の毛に触れる手に胸が騒ぎ始める。
仕事の目をした表情や思考を凝らす時の真剣な面持ち、此方の様子を見た瞬間にする罰の悪そうな顔。
「ごめん、無理にとは言わないから、気が向いたら来て」
「分かった、行って来ます」
キスをする間際の浮ついた目線と躊躇いがちに近付けて触れる唇。
「行ってらっしゃい」
言い慣れた挨拶を吐き出した後で見せる僅かに口角を上げた不恰好な笑み。
もう、本当は気付いてる、彼を好きだと言う事に。



