もう夜だと言うのに街の明るさで空は滲み、淡い群青色の空が広がって綺麗だった。
そっと身体が離れて恐る恐る近付いて来る顔に目を閉じ、重なる間際に何処からとも無く催促するような虫の声が聞こえて笑い合う。
「ごめん、台無しにして……店に入って何か食べようか」
「そうした方が良いと思う、早めに……」
ファミレスに入って夕飯を食べ、お腹を満たした後でブルーハーブティを口にしていると、彼が此方を微笑ましそうに眺めて言った。
「それ、ブルーハーブティだっけ……レモン入れると色変わるの知ってる?」
「初めて聞いた」
「少し良い?」
テーブルの上に置いたグラスに彼は脇に並べられたレモンの瓶を取り、2滴ほど落として自分の方に寄せて眺める。
底の方から桃色と紫や淡い群青色に重なる彩りは先程見た空に似ていた。
「こんな綺麗な飲み物なんて知らなかった……」
「不動産屋に貰った時、お袋から聞いたの思い出しただけ」
そんな会話をしながら飲み込むと、仄かに香るハーブが鼻を抜けて甘酸っぱさが口内に広がっていく。
思わず微睡んでしまうほどの優しい時間だった。
自分が飲み終えるまで彼は黙って佇み、時折周りに目を配りながらも此方を眺めて笑みを浮かべ、漸くグラスをテーブルに置いた所で声を掛けて来る。
「そろそろ出ようか、いつも夕飯作って貰ってるし、今日は奢らせて」
そう言って彼は伝票を手にレジへと進んで行き、少し遅れて背後を追う自分の前を塞ぐように一人の女性が歩いて行った。



